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1枚の回覧板が運命を変えた!----みなかみ町・谷川岳を支える登山ガイド 松原美成子さん

2018.6.29

*** 記事の内容は作成時のものであり、最新情報とは異なる場合がありますのでご了承ください。***
※記事の内容は作成時のものであり、最新情報とは異なる場合がありますのでご了承ください。

1枚の回覧板が運命を変えた!----みなかみ町・谷川岳を支える登山ガイド 松原美成子さん

私たちの知らない世界や環境で、私たちの知らない人たちが仕事に取り組む姿にフォーカスし、仕事を通して感じる悩みややりがい、仲間と苦労や喜びを分かち合う思いなど、働くことのリアルに迫る連載、「違うけど、同じかも。」。

第2回目となる今回は、みなかみ町を拠点に、谷川岳をはじめとする山々を巡り歩く登山ガイド、松原美成子さんです。

会社員から主婦……のはずが、運命を変えた回覧板

もともとは東京の企業で、山とは無縁の仕事をしていた松原さん。同僚だったご主人との結婚を機に、かねてから気に入っていたみなかみ町に移住しました。とはいえ、その理由は、豊かな自然と山々に囲まれた環境で、ご主人と共通の趣味である、自然な状態にある山をスキーで滑り降りる「バックカントリースキー」を楽しむため。ガイドになるとは考えてもいなかったそうです。

「みなかみ町以外にもバックカントリースキーをできる場所は各地にありますが、主人は東京の会社に勤務し続けていたこともあり、新幹線通勤ができる距離となると、限られてきます。出身が埼玉なので、関東から離れてしまうのは抵抗もありました」

1枚の回覧板が運命を変えた!----みなかみ町・谷川岳を支える登山ガイド 松原美成子さん

趣味のバックカントリーや登山を続けながら専業主婦として暮らしていた松原さんの転機となったのは、ある日回ってきた“回覧板”。町役場に設置されている「谷川岳エコツーリズム推進協議会」が、谷川岳の自然を解説し、その素晴らしさを紹介するエコツアーのガイド「インタープリター」を募集していたのです。もともと山が好きだったこともあり、「山の自然のガイドなら、自分にもできるのでは」と応募。見事インタープリターに選ばれ、ガイドのキャリアをスタートしました。

「子育てが終わったらまた会社勤めをするのかなと考えていた私にとって、ガイドに就くなんて思ってもいないことでした。回覧板がその後のキャリアを変える、大きな転機になったんです」

現在ではみなかみ町を拠点とするガイド会社「岳友舎(がくゆうしゃ)」に所属し、「登山ガイド」として活動する傍ら、谷川岳にある絶壁、一ノ倉沢までの道のりを走る電気バスに同乗し、谷川岳の自然を紹介するスタッフとしても活躍しています。

1枚の回覧板が運命を変えた!----みなかみ町・谷川岳を支える登山ガイド 松原美成子さん

谷川岳をはじめ、季節によってさまざまな表情を見せる豊かな自然に囲まれたみなかみ町は、多彩なアウトドアスポーツ、アクティビティが楽しめる場所として知られ、専門のガイド会社も多数存在します。

「わたしが所属する岳友舎は登山をメインとする登山ガイド会社です。代表 の中島正二はメディアにもたびたび登場する名物ガイドで、多くの旅行代理店から登山ツアーのガイド依頼が寄せられます。こうした依頼を受けて、私も谷川岳だけでなく、筑波山や大菩薩嶺などの日本百名山にもガイドとして出向いていますよ」

「登山客の安全を守る」ことが登山ガイドの使命

「ガイド」と一口に言っても、すべてのガイドが同じ仕事をしているわけではなく、その役割によって大きく「山岳ガイド」「登山ガイド」「自然ガイド」の3つに分けられます。

「山岳ガイド」は、岩場や沢を登るロッククライミングやアイスクライミングのような、ロープや専用の装備が必要で、命の危険もあるような状況を伴うガイドです。それに対し、「登山ガイド」は決められた登山ルートがある山で、登山ツアーなどで訪れている登山客をガイドするというもの。「自然ガイド」は、前述のインタープリターのように、高木が成長できず森林が形成されないような「森林限界」を越えない範囲で、山に生える植物などを紹介します。

今では登山ガイドとして活動している松原さんですが、自然ガイドの経験を活かし登山客に植物も案内しながら登っているそうです。

1枚の回覧板が運命を変えた!----みなかみ町・谷川岳を支える登山ガイド 松原美成子さん

「登山ツアーでは植物好きな女性の方も多いので、植物の話は楽しんでいただけますね。谷川岳は四季折々の植物が美しく、シーズンごとに見える景色もまったく異なるのが魅力です。特に一ノ倉沢周辺は、紅葉の時期であれば緑から黄、赤と1週間も経つと『色』が変わるため、季節によって変化する山の色の美しさをお伝えし、ぜひまた来てくださいとお話ししていますよ」

山の美しさを伝えるのはもちろんですが、ガイドの使命は“登山客の安全を守り、無事に下山させる”こと。登山道とはいえ自然環境の中であり、常に危険と隣り合わせの状況です。岩場や滑りやすい場所など、危険な場所の注意喚起をしながら安全に登山を楽しんでもらうために、常に気を配り続けなければいけません。

1枚の回覧板が運命を変えた!----みなかみ町・谷川岳を支える登山ガイド 松原美成子さん

「足を滑らせて怪我をしてしまったり、滑落してしまったりするリスクもゼロではありません。山に詳しいだけでなく、緊急時に対応できるかが、登山ガイドに求められる一番のスキルになります。私は赤十字救急法救急員の資格を取得し、ガイド時はロープを常備します。万が一滑落が起きた場合に速やかに救助できるよう、ロッククライミングを通してロープワークも勉強しています」

登山をするなら、「無言で登山」より「楽しくおしゃべり」と心得る

登山ツアーの場合、数十人で訪れた登山客をいくつかのチームに分け、各チームをガイド1人が担当します。松原さんが所属する岳友舎では基本的に10人前後のチームを組んでいます。

チームを組む際は、登山経験や技術レベルに応じて分けられるのが理想的ですが、不特定多数が集まる登山ツアーでは、そうした厳密なチーム編成が困難です。高齢の参加者がいることもあり、歩く速度も全員ばらばら。こうした即席チームであっても登山客の安全を守るため、ガイドがチームの中で最も体力のない人に合わせゆっくりと進みます。

「体力のない人や高齢の人にはガイドの真後ろにいてもらい、息遣いや顔色を常に観察をしています。それでもガイドについて行けなくなる人が出てきた場合は、なるべく休憩を入れ、どうしても登山が難しいときは、ツアーに同行している添乗員の方に付き添っていただき下山してもらいます」

1枚の回覧板が運命を変えた!----みなかみ町・谷川岳を支える登山ガイド 松原美成子さん

登山客の安全を守るうえで松原さんが大切にしているのが、「楽しんでもらい、モチベーションを上げる」こと。特に、家族のことや日々の生活のことなど、登山とは関係ない話題で盛り上がりながら楽しむことがポイントになるそうです。

楽しく喋りながら登山……、と聞くと「もっと集中して注意しながら登るべきで、危険なのでは?」とも考えてしまいますが、これまでのガイド経験から、無言の登山ほど、疲れが出て怪我のリスクが高まり、楽しく喋っているときは、疲れにくく怪我の可能性も少ないと松原さんは話します。

「いくら登山とはいえ、山のことばかりではつまらなくなります。ずっと山のことを考えてあれこれ配慮するのはガイドの仕事。登山ツアーでは大抵ムードメーカーになる人がいるので、その人に声をかけ、チーム内で会話が起きるように意識しています」

登山客にとって山頂に登ることが大きな目標であり、目標を達成したあとの帰り道、つまり下山はつまらないと感じる人が少なくありません。さらに、登山に慣れていない人にとって、下山時は足への負担を一気に感じるタイミングです。そんなときも、松原さんがガイドするチームはワイワイと盛り上がりながら下山し、他の登山ツアーからも驚かれるとか。

ただの“道案内”ではない。ガイドが案内する先は“山の楽しさと感動”

松原さんが「楽しむ」ことを重視するのは、安全上の理由だけではありません。そこには、ひとりでも多くの人に登山をしてもらいたいという思いもあります。

「わざわざガイドを依頼するのは、登山経験や技術はあまりないけど登山をしてみたい、と考えている人たちです。苦しい思いをして一度だけ山頂に行って終わりではなく、登山を楽しんで、何回も山に足を運んでもらいたいんです」

1枚の回覧板が運命を変えた!----みなかみ町・谷川岳を支える登山ガイド 松原美成子さん

時にはプライベートの時間を利用して、ツアー予定の山の下見に行くことも。登山客が楽しむことだけに集中できるよう、登山口の場所や落石の危険、クマやヘビが出没しないかをチェックする、植物の種類を調査する……といった準備を行います。

登山客の安全に責任を持つというプレッシャーもかかる仕事であると同時に、自然ならではの予期できない事態が起きる可能性もあり、自分の身も危険に晒す仕事という側面も。ガイドは好きな登山ができて楽しいことばかり、というわけではありません。しかし、仕事が辛い、苦しいと感じたことはないと松原さんは言います。

「無事に下山したときに、ツアーの参加者から『疲れたけど楽しかった』と言ってもらえた時の充実感は何にも変えられません。リピーターとして繰り返し谷川岳を訪れてくれる人もいますが、『新しい発見があった』と言われると、ガイドをやっていてよかったと思います。ガイドは単なる道案内ではなく、登山客に楽しさと感動を与える仕事だと考えています。そんな経験ができる仕事は、他にありません」

◆問い合わせ先
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広告主連絡先:東京都渋谷区恵比寿南1-5-5 JR恵比寿ビル9階 
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COLUMN

登山ガイドのオフ日の過ごし方……「やっぱり登山をしています!」

登山ガイドのオフ日の過ごし方……「やっぱり登山をしています!」

山が大好きだという松原さん。ガイドの仕事がないオフのときも、やはり山に登っているそう。仕事でもプライベートでも登山をしていると、切り替えが難しいのではないかと考えてしまいますが、「同じ登山でも緊張感がまったく違う」と松原さんは言います。

登山ガイドとして山に入ると、常にチームの安全に細心の注意を払い、山の景色や植物をのんびり楽しむような余裕は一切ありません。

「プライベートでの登山は自分ひとり、あるいはガイド仲間と一緒なので、誰かの体力や技術を心配する必要はありません。純粋に登山者として山を楽しみます。下見を兼ねていることもありますが、ゆっくり植物を眺めたり、周りの景色を見たり、写真を撮ったりする余裕があるのはオフのときだけですね」

あるときは登山ガイドとして、あるときは一登山者として、常に山と向き合う、松原さん。そんな松原さんおすすめの “谷川岳・絶景スポット”は、やはり「雨上がりの一ノ倉沢」! 谷川岳、そしてみなかみを象徴する場所として、ぜひこのスポットが持つ素晴らしさを体感してほしい——さあ、あなたも谷川岳に行ってみたくなってきましたか? 

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