JR東日本のエキナカに登場した「イノベーション自販機」は、スマホアプリ「アキュアパス」と連動した最先端自販機。シリーズ第一弾では、サービスと開発の経緯を本プロジェクトの指揮役であるJR東日本ウォータービジネスのプロジェクトチーム(以下PT)メンバーからお伺いしました。第二弾となる今回は、機体やアプリ開発に関するお話。JR東日本ウォータービジネスと、共同開発者であるチームラボ、富士電機の三社の開発担当者を座談会にお招きして、機体やアプリ開発の裏側に迫りました。
イノベーション自販機開発に、総勢50名を超える業界の精鋭が集結
▲左から、チームラボの西村さん、齋藤さん、堺さん、JR東日本ウォータービジネスの飯島さん、小出さん、富士電機の起(おこし)さん、守本さん ※以下敬称略
総勢50名近いスタッフが動いたという今回の一大開発プロジェクト。
堺「チームラボでは、一番多い時で約30名のスタッフが稼働していました。メンバーの内訳は、ほとんどがエンジニア。あとは、アキュアパスや自販機のサイネージ画面をデザインするデザイナーと、できあがったシステムをテストする人たちですね。本日参加している3名は、プロジェクト全体を管理するプロデューサー的な役割を果たす“カタリスト”(チームラボ独自の職種名)という立場の人間です」
守本「富士電機は、私をはじめとする営業担当者と、起が所属する商品企画部の者、あとは、工場側の実務担当者ですね。約20名体制で臨みました」
コンセプトワークに1年ほどの時間を費やした後、三社共同開発の下で、さらに1年の年月をかけて、イノベーション自販機とアキュアパスを開発したといいます。
受け取りまでのわずか“2秒”を短縮させるために費やした莫大な時間
イノベーション自販機では、アキュアパスと連動させたさまざまなサービスが受けられますが、こうしたソフトウェアの開発における苦労はどのようなところだったのでしょうか。
西村「今回のシステムはかなり複雑なものだったので、構築には大変な苦労がありました。イノベーション自販機とアキュアパス、きちんとリアルタイムで情報連動する状態を作らなければいけなかったからです。たとえば、自販機で商品を受け取ったのにも関わらず、アキュアパスにいつまでも商品が残っていたのではシステムとして成り立ちません。商品を受け取った瞬間に、購入した商品がアキュアパスで受け取り済みになったことがわからないといけないんです」
単なるインターネット上のやりとりだけではなく、その間に自販機というハードウェアが絡むことで、開発は困難を極めたといいます。
西村「ほかにも、自販機の前で選んだ商品の支払いをアキュアパスで行う“後払い”という機能があるのですが、この内部処理にかかる時間の短縮にも非常に苦労しましたね。後払い機能では、登録したクレジットカードを使って1カ月分の料金をまとめて支払うのですが、その処理の仕組み上、スマホを決済部にかざしてから商品が出てくるまでにかなりの時間を要してしまうんです」
当初、処理にかかっていた時間は約5秒。これは、私たち消費者がSuicaと同じ感覚で購入しようとした場合、「あれ? 出てこない!」といった違和感を覚えるスピードなのだとか。
西村「富士電機さんと綿密な連携体制をとりながら、プログラムの改良を重ねて、3秒ほどにまで短縮することができました。たかが2秒と思われるかもしれませんが、どうしてもこの時間を短縮させたくて……。三重県にある富士電機さんの工場に、何日も合宿に伺いました。計10日は行ったんじゃないかな」
ほかにも、スマホを取り出してからすぐに商品が受け取れるよう、アキュアパスの立ち上げ画面はQRコードが表示されるようになっていたり、一発で正確に読み取りができるよう、QRコードの画面は通常よりも明るく表示される設定になっていたり。消費者がストレスなく買い物できるよう、さりげない思いやりが随所にちりばめられているそうです。
目を引きながらも、商品を美しく引き立たせる“黒”のマジック
▲チームラボ×西村拓紀デザイン事務所が提案していた初期のイノベーション自販機のデザイン案
真っ黒な機体が目を引くイノベーション自販機ですが、“黒”を選択したのはなぜですか?
齋藤「筐体のカラーに黒を選んだのは、“目立つから”という理由がひとつあります。黒い自販機って日本ではほぼ見かけることがないので、『目を引くのでは』と。もうひとつは、“商品を際立たせる”目的です。色の候補としては、白や黒だけでなく様々な色を検討していたのですが、ディスプレイ上だと明るい色は発光が強くてぼやけてしまったり、眩しすぎたりしてしまうんですね。最終的に、ディスプレイが見やすく、商品もきれいに映える“黒”で提案をさせていただきました」
同じ黒でも、ツヤのあるものがいいのか、ないものがいいのか――。製造直前の最後の最後まで議論が交わされたといいますが、最終的には、商品よりも目立ちすぎず、指紋などの汚れも目立ちにくいマットな色味のものが選ばれたそうです。
ほかにも、商品が際立って見えるよう、機体とディスプレイの背景のカラーを同じに揃えたり、機体と画面の境目を分かりにくくなるようなデザインを施したり。私たちが何気なく眺めているディスプレイ部分に、こんなにたくさんの工夫が凝らされているとは思いもよりませんでした。
丸みのある独特の形を実現させた“匠の手仕事”
角が丸くなった独特の形が印象的ですが、なぜ、あのような形になったのでしょうか。
齋藤「デザインとしては、プロダクトデザイナーの西村拓紀さんと一緒に、“10m離れた先からも、新しい自販機である”ことが認識できるというコンセプトを掲げて作りました。ただの箱型だとこれまでのものと同じになってしまうのと、筐体が大きいので威圧感を与えないようにするために、『今までにはなかった、丸みのある形にしたい』とお願いしたんです」
飯島「我々も一緒になって『そのデザイン、いいですね!』と盛り上がっていたのですが、作る方はすごく大変だったみたいですね。角のない丸い部分は機械では作れないので、職人さんたちが手作業で板金したと聞きました」
守本「はい。通常、自販機というのはある程度機械で作っていくのですが、今回の機体に関してはほぼ手作りになっています」
未来型を誇る最先端自販機に、まさか職人の技が吹き込まれていたとは、驚きです。
業界随一! 迫力大画面のディスプレイを搭載。その狙いとは?
通常の自販機と一線を画するのが大画面のディスプレイ。業界随一の大きさだといいます。
飯島「ディスプレイの大きさはチームラボさんとお話をして決めました。これぐらいの大きさがあれば、今後いろいろな表現や演出ができるよね、と。次世代自販機でも、このサイネージを採用していたのですが、デジタル演出を得意とするチームラボさんの技術のおかげで、画像のクオリティが格段に上がりました」
画面が大きくなったことで、従来の画面では実物よりも小さくしか表示できなかった商品見本が、ほぼ実寸大で表現できるようになったそうです。実物の大きさや商品のイメージが一層伝わりやすくなることで、私たち消費者としても手を伸ばしやすくなる印象を受けました。
小出「さらに、クリアな画像が実現できたことで、“おいしそう”に見える画質が叶いました。実際に手に取って見ているようなリアルな質感を見ていただければと思います」
喉が鳴るような、みずみずしい商品画像。眺めているだけで、「おいしそう」「飲みたい」といった感情が、知らず知らずのうちにかき立てられてしまいますね。
齋藤「今後は、夏の演出として冷たい商品には水滴をまぶす加工を施すなど、サイネージだからこそできる、よりおいしそうに見える表現を追求していきたいですね」
デザイン性の高さと自販機機能の両立という難しさに直面
美しく、おいしそうに商品を見せることができるディスプレイですが、機体にとってはいいことばかりではないといいます。
起「イノベーション自販機は、46インチもある大型パネルを2枚も並べているので、かつてないほどの熱が生じるんです。当然、それをそのままにしておいたのでは、中に入れている商品の温度も上がってしまう。“冷たいものを、しっかり冷たい状態でお届けする”といった自販機としての価値を守りつつも、チームラボさんが提案するデザイン性をいかに忠実に再現するかの狭間で苦労しました」
では、その課題を解決するにはいったいどのような工夫が施されているのでしょうか?
起「扉は、従来のものより若干厚くなっていますし、断熱材もさらに性能のよいものを使いました。あとは排熱構造の工夫ですね。通常の自販機も、熱がこもらないよう、ディスプレイの表面や背面にファンで風を送ってクールダウンをするのですが、今回はその機構を大規模にして、よりパワーのあるものに切り替えています。以前よりも大きくなったファンの風切り音を軽減させるために、音の抜き穴の形を考えたり、部品の選定にも気を配ったりしているんですよ!」
“冷たいものが、しっかり冷たい状態で出てくる”――私たちがごく当たり前に享受している自販機サービスの裏側には、たくさんの心遣いが隠されていたんですね!
手元の操作だけで購入ができる! スマートな買い物を叶える「低位置メニュー」
▲画面の下部に用意されたお子様や車いすの方に使いやすい『低位置メニュー』
実は、高さが約2.1mもあるイノベーション自販機。それよりもサイズの小さい従来の自販機でも「上段に手が届かない」という課題が生じていたことから、「お子様や車いすの方でも手が届くように」と『低位置メニュー』機能が設けられているといいます。
飯島「左下にある『低位置メニュー』のボタンを押すと、別ウィンドウが中央下部に表示され、カーソルボタンで商品を選択することができます」
齋藤「今までの自販機にも低位置で買えるものはありましたが、それらはドリンクのパッケージとボタン、決済部分が離れた箇所にありました。イノベーション自販機では、ディスプレイ内に『低位置メニュー』を搭載したことで、商品パッケージを見上げることなく、手元の操作でドリンクの選択と支払いができるようになっています」
手元の操作だけでサッとドリンクの購入ができる――。スマートな買い物ができるのも、ディスプレイを使ったイノベーション自販機ならではのメリットといえそうです。
サービスも、設置エリアも次の展開へ。イノベーション自販機の未来とは!?
「できること」からサービスを考えるのではなく、消費者の行動に寄り添って完成したイノベーション自販機とアキュアパス。気になるその展望について伺ってみました。
堺「自販機を含め、リアルな世界では活用されていない“WEBの世界では当たり前の発想”が、まだまだたくさんあると思うんです。たとえば、WEBであれば、どんなページを誰が見ているかをリアルタイムで全部見られるわけですが、アプリを介することで今後、こういったことも自販機で可能になっていくかと。これまでできなかったデータ収集が可能になることで、今までよりも正確に“お客さまが望む”商品の提案だったり、新たな “売り方”の工夫もできるようになったりしていくのでは、と思っています」
守本「そうですね。WEBを経由することで、今までの自販機ではできなかったデータの収集が可能になるので、一層便利に、効率的に自販機を使っていただけるように役立てていきたいですね」
起「開発者としては、QRコードを使った今回の新購入システムを、もっと世の中に普及させていきたい、という想いがあります。今後、イノベーション自販機の量産型モデルを開発し、東北エリアや信越エリアなど、広範囲にわたる普及を予定しているので、実現に向けて頑張ります」
革新的なサービスで自販機の歴史を塗り替えてきたJR東日本ウォータービジネスと、斬新で未来的なソフトウェア開発で名を馳せるチームラボ、そして自販機開発の最高峰集団として業界をけん引する富士電機。イノベーション自販機とアキュアパスには、三社の並々ならぬこだわりと技術の数々が詰まっていました。
※「イノベーション自販機」をはじめとしたアキュアの自販機で購入できるドリンクは、駅・時期により異なります。
※「イノベーション自販機」をはじめとしたアキュアの自販機の設置箇所は、随時更新されます。
◆問い合わせ先
広告主名:株式会社JR東日本ウォータービジネス
広告主連絡先:東京都渋谷区恵比寿南1-5-5 JR恵比寿ビル9階 電話番号:03-6853-6001
媒体名:アキュアラウンジ